食パン

他のみんなが友人宅に向かうタクシーに分乗するなか、ひとりの先輩が俺の肩を引き寄せて、そのロレツのまわらぬ口でなにかを言った。

「おい、いまから……」
なんだ、俺をどこか他のみんなとは違う方向のバーへと連れて行こうっていう誘いか? おもしろい行こうじゃないか。
「いまから…… いまからおいしい食パン食べに行こうぜ」
「食パンはちょっと……」

下を向いてニコリと笑う。
時計を見ると午前4時。

良い夜だ。
(実話)